久しぶりに裁判の傍聴に行った。　偶然にも、少し気になっていた、昨年７月に発生した小網代湾の秋田谷まり子殺人事件の裁判がまもなく始まる。　ラッキー（不謹慎かな）と思い、法廷入口の傍聴者の列に並び、記者席のすぐ後ろに座った。　被告席のグレゴリー、グモ容疑者は端正な顔立ちで血色も良く、表情も落ち着いて見える。　凶悪犯罪を犯し、苦渋を抱え窶れていると思ったがそんな様子は見られない。　開廷直後、パーテーションで囲まれた証人席から聞こえる被害者の母の証言、涙声で言葉に詰まりながらも切々と訴える声は哀れで切なく胸を打つ。　グモ容疑者に目をやると被害者の母の証言（通訳の説明を）を聞いているのかいないのか、俯いてはいるが緊張とか、うろたえる姿は見えない。
この事件で、私が報道で知る限りでは、グモ容疑者は小網代湾で発見された女性死体（秋田屋まり子４２歳）の殺人、死体遺棄の容疑者として逮捕された。　黙秘の末「車の中で気がついたら死んでいた（呼吸もしていなかった）ので、パニック（自己保身のため）になり自宅に戻り、死体を袋に入れ、コンクリート片をつけたロープで巻き、自分のカヌーで運び、海中に投げ捨てた」と供述している。　
グモ容疑者（米国籍４１歳　無職）には日本人の妻と３人の子供がいるとか。　この程度しか知らないが、報道されている状況では、どう考えてみてもグモ容疑者の犯行が濃厚で、必ず実刑になるだろうと思っていた。　
ところが、数日前の神奈川新聞の「証拠不十分で殺人罪で起訴できず、死体遺棄だけで起訴する」の記事にびっくりしていた。　
そしてこの日の検察の　「死体遺棄で２年６月」　の求刑に、そんなものかな～と　やりきれない、いやな気持ちになった。　その後の弁護人の言うことは、私には良く理解できないが「死体と断定されていない人体の遺棄だから死体遺棄にはあたらないとか、したがって　被告は無罪　です」みたいな主張したのにはおどろいた。　
被告人の最終陳述では、被害者や家族に申し訳ないような、反省の弁（情状酌量を目的とした常套手段）に終始し、それをくどくどと繰り返す。　裁判長に「簡潔に」と促され、自分の家族への謝罪を最後に陳述を終えた。　
殺人罪が立証できないから殺人罪で起訴をしない検察？　殺人を立証できないから死体遺棄にも当たらないと主張する弁護士？
容疑者の供述が真実か否か（自らの行為以上の供述はする訳がなく）は別にしても、私には黙秘や嘘で罪を逃れようとしている、身勝手極まりないアメリカ人としか思えなかった。　
刑事裁判の意義は、検察は事実を立証し、法と秩序のもとに犯した罪に相応した償いを科し、弁護人は被告の立場になり、被告の主張をもとに、真実を見い出し、行った行為に相当する償いを決めるためのものと思っている。　間違っても、検察は　事実を押し曲げたり、手を抜いたりしていないか？　そして、弁護人は　被告人や、弁護人自身の欲得の思惑を持って、被告人の償いを逃れさせための詭弁を弄していないか？と　　どう考えても釈然としない。　しかしこれが現実なのだ！と受け入れるしかないのだろうか・・・・・

２０１６・４